近畿支教区平和推進会議(担当:東 靖憲京都教会長)の第2回学習会が9月8日にオンラインで行なわれ、近畿11教会の各担当者が参加し見識を深め、京都からは渉外部副部長が出席しました。
今回は篠原祥哲氏(WCRP日本委員会事務局長、ACRP事務総長)が「WCRPと紛争和解」と題し、約1時間の講演を行ないました。
講演前に担当の東教会長は「1回目の学習会はテラ・ルネッサンスからウクライナの現状を伝えて頂いた。今回は宗教の側面から紛争をどのようにとらえていけばいいか、我々のアプローチはどうすればいいか、について世界最大の宗教機関WCRPの事務局長の篠原さんより講演を頂くので、この機会にWCRPを正しく理解する、今の世界でWCRPがどんな役割をしているか、ロシアのウクライナ侵攻に対してWCRPがどう対応しているのか」を学んで頂きたいと述べられました。
篠原氏はあらためてWCRP(世界宗教者平和会議)について設立の精神や過去の大会の歴史を振り返り、「異なる宗教、共通の行動」という根本部分を強調されました。1970年、京都での第1回大会は第二次世界大戦を宗教者が止められなかったことへの反省から生まれたものだとし、当時、米ソを中心に核兵器の数が増加したことやベトナム戦争、環境問題など政治だけでは解決できない諸課題に宗教者が取り組む第一歩になったと述懐されました。その後、約4~7年ごとに世界各地で開催されてきた中で、WCRPの使命と役割は社会的資源と精神的資源であると解説。宗教協力から生まれる力を活用して紛争解決や平和構築、持続可能な開発を推進することだと述べました。また、世界では国の行政よりも宗教団体のほうが地域住民のことを把握しているのが現状で、それら宗教共同体を生かすことでWCRPは今や92ヶ国に属していると説明しました。
続いて、WCRP日本委員会の取り組みを紹介。韓国、中国、北朝鮮、米国のそれぞれと日本の2国間の宗教対話は政治が停滞している場合や、国交がない状態でも信頼醸成と共通行動の確認のため継続されており、北朝鮮にもWCRP国内委員会が存在することにふれ、「拉致問題」については突っ込んだ議論になったことを述懐されました。
また、WCRPの4つの活動について、①国内外の宗教者同士の連携や政治指導者との連携、NGO、市民社会との連携による「ネットワーキング」、②国連、G7サミットなどへの「提言」、③環境教育、平和大学講座、和解のためのトレーナー養成などの「教育・啓発」、④難民受け入れ、災害復興などの「人道支援」など多岐にわたっていることも紹介されました。
ロシアによるウクライナ侵攻についてはWCRPとしてどのようなアプローチが出来るかを模索しながら、プーチン大統領とロシア正教との関係性に着目し、現在も平和解決に向けた宗教外交を継続中であることが報告されました。特に紛争地域の宗教者を日本に呼び東京平和円卓会議を過去2回行なう中で、「和」を重んじる日本の宗教施設見学で佼成会の「大聖堂」を訪れた際、4階ホールに職員や杉並教会の会員約1,000名が拍手で“おもてなし”されたことで紛争地域の宗教者同士の関係が徐々に変化したことが印象的だったと振り返りました。
講演後はさまざまな質疑応答がなされ、最後に東教会長は、熱量の大きい講演に感謝しながらも、篠原氏が発表されたことはすべて“現在進行形”であることを私たちは目前にしているとし、庭野開祖の「WCRPは複雑骨折のようで、あちらを立てればこちらが立たず」の言葉を紹介。本当に難しい問題ばかりで、その中から考え出されたものは“智慧”に違いないと述べながら、WCRPは私たちの活動の一部であるとの認識で、その価値を高めていきたいと結ばれました。